シドニーに到着して、当たり前ですが周りの人の英会話をワーッと聞き、圧倒されたのを覚えています。私に話しかけてきているわけではないのに、英語がわからないことで何故か不安になる、肌寒いような感覚でした。
到着後1週間は、買い物の仕方や公共交通機関の使い方、家周りの環境を知るくらいで、
「ま、生活くらいは何とかなりそうだな。(買い物レジ、自動だし。)」
なんて余裕かましてた自分が恥ずかしくなる事件が起きました。
住んでいるアパートに併設されたスイミングプールに、子供と行こうとしたのですが、手動でドアガラスの向こうにあるボタンを押さないと中に入れない仕様で ”何をしても腕が届かない!!!”
腕がごく短い自分にはムリ!な距離に開閉ボタンがあり、「これって開閉ボタンじゃないのかも」と思い始めました。プール遊びを諦めようともしたんですが、もう水着で遊ぶ気マンマン!な子供の手前引き返せない。
そこで私は、思いっきり「This button is an emergency button」「if you press it, it will urgently open.」と書いてあるボタンを「ドアが開くならいっか。」くらいの気持ちで押したんです。
はい、緊急ボタンでした。すんごい爆音で警報が真上で鳴り、ミッションインポッシブルのイーサンハントでもチビる空間になりました。
日本の警報と違って、赤いライトがビカビカ私を照らして、音も「ビーーーーーーーーーー!!!!!!ビーーーーーーーーーー!!!!!!」みたいな鳴り方なんです。
当然子供は気が動転して大泣き、私も泣きたい気持ち、でも押したのは自分。ここで逃げたら逃亡犯。という状況で、爆音の警報のなか自首することに決めました。
泣きわめく子供の手を引いて、水着のまま1階の受付に走り込み、受付の人に
「アイ、プッシュ、イマージェンシー」「アイ、プッシュ、イマージェンシー、ソーリー、ソーリー」と必死に言ったんですが、
発音が悪すぎて相手にしてもらえず、思い立ってその人の腕を掴み、受付デスクから警報の鳴り響くプールまで強引に引っ張っていきました。
その人は警報を聞いてやっと事の重大さを認識し、叫びながらセキュリティ担当の方を呼びに行きました。その間も取り残された私と娘は水着で棒立ち。私は誰も聞いていないのに「ソーリー、ソーリー…」と呟く亡霊となり果てていました。
セキュリティ担当の人が到着、その警報を鳴りやませようとしていたのですが、一筋縄ではいかない仕様らしく、色々な器具を用いて40分以上の時間を要しました。
やっと鳴りやんだ頃、受付の人とセキュリティ担当の人が最後に私に話しかけ、
子供を指さしながら「子供が押しちゃったんだろ?しょうがない。」と言ってくれたんですが、
こともあろうか私は「ノー、アイ、ディドゥ(No.I did.)」と言い放ちました。
子供の前で嘘はつかないという教育方針がこんな形でブチ返ってくるとは思いませんでした。
それからのことは覚えていません。というか聞き取れていません。一つ確かなことは、しっかり怒られました。言語を越えて、相手が怒っていることはしっかり認識できました。
その日以来、子供は、私×プールの組み合わせ=警報 であるというトラウマが芽生え、「プールはパパと行く」と言うようになりました。
自分のアパートメントの中の設備すら使いこなせない私…「No.I did」しか聞き取ってもらえない私…
かなり生きていくことが心配になりました。
この経験で習得した英語構文はコレです。「This button is out of my reach.」 out of~で、~の範囲外 と表現できます。この英語構文さえ知っていれば、緊急ボタン押す前に助けを得られたのに…
コメント